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ビール用の酵母を比較し、選択するための指標について

本記事では、酵母を比較し選択するために、重要な「主要な指標」と「醸造時の使い方」について見ていきます。


Understanding a Beer Yeast Data Sheet

この記事は原著者(BeerSmith)の許可を得て翻訳・公開したものです。

著者: BRAD SMITH


今週は、多くのイーストラボが公開している、酵母に関する「主要な指標」と「醸造時の使い方」について見ていきます。

酵母データシート

多くのイーストラボが自社のイーストの特徴について詳細なデータを提供するようになり、醸造家は入手できる情報が多くなりました。本記事では、もう少しデータについて掘り下げ、よく見かける基本的なデータと、より高度なデータを取り上げます。

酵母の基本データ

以下には、すべてのラボが提供している基本的な酵母のパラメーターをまとめています。

  • 減衰(Attenuation)
    減衰率とは、糖分または比重値の何パーセントが、アルコールに変換するのかを示す指標です。通常は、名目の減衰率の数値として表記されています。減衰率の高い酵母は、一般的に糖分を多く発酵させ、よりドライになり、モルティではない仕上がりになります。

  • 温度範囲(Temperature Range)
    これは、発酵のための推奨温度範囲です。推奨された温度での範囲であれば、上手く発酵し、フレーバーにも良い影響を及ぼします。推奨された範囲よりも高温で発酵させると、エステルやフーゼルアルコールなどのオフフレーバーが発生し、低温で発酵させると、酵母のパフォーマンスが低下する可能性があります。

  • 凝集(Flocculation)
    発酵終了後、酵母が麦汁内で沈殿する速さを示す指標です。一般的に、高い凝集性の酵母はより早く成熟し、沈殿しますが、低い凝集性の酵母は長い成熟期間を必要とすることがあります。

  • アルコール耐性(Alcohol Tolerance)
    酵母が、どれくらいのアルコール度数に耐えられるかを示す指標です。多くのビール酵母は、アルコール耐性が5〜10%と低く、非常に比重の大きなビールには不向きなので、比重の大きなバッチの場合は、この指標に注意する必要があります。

💡 上記のパラメータを、実際に見ることができるサイトをご紹介します。
WHITE LABS − California Ale Yeast

アドバンスト・イーストデータ

このデータを見つけるのはより難しいかもしれませんが、有名なラボでは、問い合わせれば入手可能です。通常、このデータは何らかのスタイルのビールを醸造し、酵母のパフォーマンスと発酵の副産物を測定することで収集されます。

  • イソアミルアルコール/アセテート(Isoamyl Alcohol/Acetate)
    ビールによく含まれるエステル(ester) で、少量であれば梨の花やバナナのようなフレーバーがあります。酵母の全体的なエステルのプロファイルの指標となります。

  • アセトアルデヒド(Acetaldehyde)
    発酵中に生成される中間化合物で、青リンゴのような味と香りがします。

  • 酢酸エチル(Ethyl Acetate)
    ビールによく含まれる強いエステルで、少量ではフルーティーなフレーバーを持ちますが、量が多くなると溶剤のフレーバーを帯びます。

  • 2.3 Pentainedione(2.3 Pentainedione)
    ビシナルジケトン(※1 ジアセチルのようなVDK) は、蜂蜜のようなフレーバーを与えますが、嗅覚値が低いです。ジアセチルレスト(diacetyl rest)を使用することで低減できます。

  • ジアセチル(Diacetyl)
    もう1つのVDKで、完成したビールにバターやポップコーンのようなフレーバーがあります。ジアセチルレスト(diacetyl rest)使用することで低減させることができます。

  • 1-プロパノール(1-Propanol)
    高次のフーゼルアルコールで、強いアルコール臭や溶剤のようなフレーバー(密造酒のような)を放ちます。

  • エタノール(Ethanol)
    単純にテストバッチの体積比のアルコールです。

  • Hours to 50%
    発酵が50%完了するまでの時間を表す指標です。酵母がどれだけ早く発酵を終了させるかの指標になります。

酵母を比較する

上記のデータは、酵母のパフォーマンスを比較するために使用することができます。これには減衰率のような基本的な指標の比較から、エステルのプロファイルに基づいた酵母の選択など、より高度な比較も含まれます。

私の上級コース「Designing Beer」では、このような比較をいくつか行い、類似の酵母間の大きな違いを受講生に理解できるようになっています。このような分析を前もって行っておけば、醸造の前に、より賢い酵母の選択が可能になります。

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出典元
Understanding a Beer Yeast Data Sheet


※1 VDK
ジアセチルはVDK(ビシナル・ジケトン)と言われるものに分類され、ビールのオフフレーバです。

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