オフフレーバー
ビール醸造の始めたて時期に、よくあるトラブルシューティング
本記事では、自家醸造だけでなく、マイクロブルワリーでもよく起こるトラブルシューティングについて紹介します。様々なオフフレーバーや口当たりの特徴とその原因について説明します。
Troubleshooting Homebrewed Beer
この記事は原著者(BeerSmith)の許可を得て翻訳・公開したものです。
著者: BRAD SMITH
今週は、「自家醸造ビールのトラブルシューティング」というテーマについて調査したいと思います。緻密に最善の計画を立てても、醸造したすべてのビールが上手くわけではありません。ビール醸造は、芸術と科学の融合であり、時には芸術や科学がうまくいかないこともあります。
幸いなことに、すべてが失敗ではないです。出来が悪いバッチの一つ一つを診断し、次のバッチを改善する方法を学ぶ、良い機会だからです。次に調べるべきは、ビールの味です。ビール醸造におけるトラブルは、様々な原因があるため、以下のガイドを使用して評価していきます。
苦味 − Bitterness
ビールの苦味は通常、舌の奥で感じられ、後味として苦味が現れることが多いです。苦味が少なすぎると、ビールは非常にモルティで、甘く、大麦 (※1 grainy) のようなフレーバーになります。IPAのように高い苦味を必要とするビールもあれば、スコッチや多くのドイツ系エールのようにモルティなプロファイルを必要とするビールもあります。
過剰な苦味は、煮沸/苦味ホップの過剰使用、長い煮沸時間、黒麦芽やロースト麦芽の使用、アルカリ性の水や硫酸塩過剰の水の使用によって生じます。逆に低い苦味は、重力に対する低い苦味の比率、少なすぎるホップ、ウィーンやミュンヘンモルトなどのモルティな穀物、短い煮沸時間、高い発酵温度によって生じることがあります。また、ろ過をすることによっても苦味を減らすことができる場合が多くあります。
ボディ − Body
ボディは、ビールの口当たりや厚みと呼ばれることもあります。フルボディのビールは丸みを帯びた厚みがあり、ライトボディのビールは軽い印象があります。
私は最近、ビールのボディを強化する方法について記事を書きました。以下のようなテクニックを紹介しました。
- キャラメル、クリスタル、カラフォーム、乳糖、マルトデキストリンなどを加える
- 全体的に麦芽を多く添加する
- 小麦を加える
- ビールの仕込み温度を上げる、低温で発酵させる
逆に、軽いビールにするには、添加物を減らしたり、米や砂糖を加えたり、もろみ温度を下げたり、高い温度で発酵させたりします。
ジアセチル フレーバー − Diaceytl Flavors
ジアセチルのフレーバーは、バターやバタースコッチのようなフレーバーとして現れます。多くの場合、その原因は不完全な発酵によるものです。
不完全な発酵が起こる原因は、イーストスターターが古いか、サイズが小さいか、発酵前の麦汁の酸素不足、イーストの栄養分の不足、細菌汚染、適切な栄養分を持たないトウモロコシや米などの過度の添加物の使用などがあります。また、温度の急激な上昇や下降、フィニッシングの添加、凝集性の高い酵母の選択などにより、発酵を早期に停止させるなどもあります。
適切なサイズのイーストスターターを使用し、発酵前に麦汁に適切な酸素を供給し、汚染を避け、麦芽の大部分に新鮮な大麦を使用することでジアセチルに対抗することができます。大麦は、酵母の適切な成長に必要な栄養素を自然に含んでいます。
アルコール度数 − Alcoholic Profile
ビールのアルコール度数は、口や喉が温かくなる感覚として認識されることが多いようです。BJCPスタイルガイドの初期比重と最終比重に示されているように、スタイルのビールに合わせて、それぞれ異なるアルコールプロファイルを必要とします。理想的には、ビールは全体の味を引き立てるようなバランスの取れたプロフィールを持つべきです。
フーゼルアルコールはビール中に溶剤のようなフレーバーを残し、多くの場合、過度に高い温度で発酵させることによって発生します。酵母の推奨温度内で発酵させることで、溶剤のようなフーゼルのフレーバーを緩和することができます。
適切なアルコールのバランスにするために、ビールのスタイルに合わせて適切な比重を調整し、発酵中に麦汁をエアレーションし、発酵温度を推奨範囲内に保たれていることを確認します。
もし、アルコール度数とビールのボディのバランスが著しく悪い場合は、レシピのバランスを良くするために、ビールのボディを調整します(テクニックは上述)。
渋味 − Astringency
渋味は、大麦 (※1 grainy) やハスキーなフレーバーとして感じられます。場合によっては、ドライな感じや、ブドウの皮の味に似ていることもあります。
渋味は、過度な穀物のスパージングや穀物のボイルによって発生することがほとんどです。また、過度の熱水(175°F以上)でのスパージング、麦汁中の余分なトラブ(発酵前に溜まる澱)、穀物の過度なミリングによっても起こることがあります。
ビールを醸造する際には、適切なミリング、スパージング、ローリングボイルを行うことで、渋味を最小限に抑えることができます。
フェノールフレーバー − Phenolic Flavors
フェノール系のフレーバーは、薬っぽい、あるいはバンドエイドのようなフレーバーとして認識され、かなりきつい印象を与えることがあります。また、プラスチックやスモーキー、クローバーのような風味と感じられることもあります。フェノール系のフレーバーが強いと、ビールを飲みにくくなる、また場合によっては飲めなくなることもあります。
渋味などのフェノール系のフレーバーは、穀物の過度なスパージングのほか、ボイルによっても起こります。また、塩素処理された水道水の使用や、バクテリアによる汚染もフェノールフレーバーの原因となります。
小麦モルトやローストした大麦モルトの過剰な使用も、クローブのようなフレーバーの原因となります。機器やボトルキャップの漏れや汚染の可能性をチェックし、スパージングプロセスを慎重に管理し、必要であれば別の水源を使用してフェノール類を軽減してください。
硫化ジメチル(DMS) − Dimethyl Sulfide
硫化ジメチルのフレーバーやアロマは、キャベツや腐った卵、甘いトウモロコシのように感じられます。過剰な硫化ジメチルは、ビールを台無しにする可能性があります。
硫化ジメチルには、多くの原因が考えられます。例えば、水分の多いモルト(特に6列)、バクテリアの混入、低温(160°F以下)での過度なスパージング、イーストのピッチング不足などが挙げられます。
煮沸中に鍋に蓋をすることも、硫化ジメチルを発生させる原因となります。モルトを涼しく乾燥した場所に保管し、スパージングやボイルに注意し、適切なイーストスターターを使用することで、硫化ジメチルの悪影響を軽減することができます。
酸味/酸性フレーバー − Sour/Acidic Flavors
酸味と酸性フレーバーは、苦味、サイダー、レモンジュース、あるいは酸っぱいキャンディのようなフレーバーを、通常舌の横で認識します。
酸味の主な原因の一つは、適切な衛生管理がなされていないことによる汚染です。また、過剰な糖分、特に初心者の多くが使用する精製糖の使用は、サワーサイダーのようなフレーバーをもたらすことがあります。その他の原因としては、過剰なアスコルビン酸の添加、バクテリアの混入、発酵温度の高すぎ、非常に暖かい温度でのビールの保管などが挙げられます。
今週のビールのトラブルシューティングガイドは、一般的な醸造上の問題とその原因を診断するのに役立つと思います。この記事の一部はBrewWikiのトラブルシューティングページから派生したものです。BeerSmith Home Brewing Blogをご覧いただきありがとうございます。毎週配信されるご購読をご検討いただき、コメントやメールをどんどんお寄せください。
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出典元
Troubleshooting Homebrewed Beer
※1 grainy
大麦やオーツ麦やふんだんに入った雑穀パン、ナッツがたっぷり入ったグラノーラやクッキー。またはキヌアのサラダ。健康ブームに伴って増えてきたこれらメニューの食感を、grainyと表します。粒(grain)がたくさん入っていて食べごたえがあり、ざくざく歯ごたえがある感じです。日本食でいえば十穀米のぷちぷち感が近いでしょう。
引用元:TABIZINE − 日本語に訳すのが難しい「英語の味覚表現」5選〜甘くておいしいベトベト?〜(引用日 2022/12/28)