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SIMCOE (2016) PALE ALE

ホップ

【作ってみた】シムコー(2016) ペールエールのフレーバーとアロマ

「Simcoe − シムコー(2016)」を使用したペールエールのフレーバーとアロマを知るために実際に作ってみました。あえて、他のホップと混ぜずペールエールをつくり、その特性を探ります。

THE HOP CHRONICLES | SIMCOE (2016) PALE ALE

この記事は原著者(Brülosophy)の許可を得て翻訳・公開したものです。

著者: Jason Cipriani


Select Botanicals Groupによって2000年に登場したSimcoeは、高いアルファ酸と低いコフムロンだけでなく、刺激的なシトラスとパインの特徴を持つビールを生み出すことから、多くの醸造家のお気に入り品種になりました。シムコーを使用したビールには猫の尿のような香りを感じるという人もいますが、シムコ―は時代を超えて生き残り、多くの現代のアメリカンペールエールやIPAに使用され続けています。

https://i0.wp.com/brulosophy.com/wp-content/uploads/2018/03/Simcoe_THC.jpg?resize=1024%2C309&ssl=1
成分
α酸 11.5-15%
β酸 3-4.5%
コフムロン 17-21%
Oil 0.8-3.2mL/100g
ミルセン 40-50%
フムレン 15-20%
カリオフィレン 8-14%
ファルネセン 0-1%
リナロール 0.5-0.9%
ゲラニオール 0.8%
β-ピネン 0.5-1%
交配した二個体 Unknown

シムコーの人気が高いこともあり、私はシムコーを使用した市販ビールを何種類か飲んだが、その多くはシムコーが主役でした。また、シムコーを大量に使ったビールをいくつか作ったところ、おいしいものもあれば、かなり「猫の尿臭」を感じるものもありました。私は、高く評価されているシムコー種だけでホッピングしたシンプルなペールエールを利き酒師がどう思うかをみるのが楽しみでした。

実際に作って、ホップのフレーバーとアロマを探る

このビールのレシピは、飲みやすいグリスト(※1)と大量のシムコ―ホップを使って、ザ・ホップ・クロニクルズのために特別にデザインされました。

Simcoe Pale Ale

レシピの詳細

Batch Size(バッチ サイズ) Boil Time(煮沸時間) IBU(国際苦味単位) SRM(標準参照法/色度数) Est. OG(初期比重) Est. FG(最終比重) ABV(アルコール度数)
6 gal 60 min 35.3 IBUs 4.1 SRM 1.053 1.014 5.1 %
Actuals 1.053 1.01 5.6 %

発酵させる材料

名前 %
Pale Malt, 2-Row (Rahr) 6 lbs 50
Pale Malt, Maris Otter 6 lbs 50

使用するホップ

名前 時間 使い方 形状 α酸(%)
Simcoe 16 g 60 min Boil Pellet 11.9
Simcoe 21 g 10 min Boil Pellet 11.9
Simcoe 64 g 2 min Boil Pellet 11.9
Simcoe 85 g 3 days Dry Hop Pellet 11.9

使用する酵母

名前 ラボ 発酵度 温度
Urkel (L28) Imperial Yeast 73% 52°F - 58°F

醸造メモ(水のプロファイルなど)

Water Profile: Yellow Bitter in Bru’n Water Spreadsheet

レシピのダウンロード

Download this recipe's BeerXML file


醸造の前夜、Imperial Yeast L28 Urkelを使って十分な大きさのスターターを作りました。

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酵母が回ったところで、仕込み水を採取し、穀物を計量してミルで挽く作業を行いました。

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翌朝、材料をGrainfather(※2)に投入し、汲み置き水を加熱し始めました。少ししてからマッシュを投入し、目標の糖化温度に達したかどうか確認しました。

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水の状態が少し悪かったのか、マッシングを始めてから15分ほど経過した時点でpHの数値が予定より少し高くなりましたが、心配するほどではありません。

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Click pic for Grainfather review

60分の糖化レスト(Saccharification Rest)後に、穀物を取り出し、スパージングに取り掛かりました。

https://i0.wp.com/brulosophy.com/wp-content/uploads/2018/02/05_THCSimcoe_sparge.jpg?resize=1024%2C576&ssl=1

スパージングが完了したら、麦汁を煮沸するために加熱をはじめ、その間にケトルに入れるホップを計量しました。

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Click pic for Ss Brewtech Brew Bucket review

麦汁を60分間煮沸し、レシピ記載されているタイミングでホップを投入しました。煮沸が終わると、Grainfather CFCを使って麦汁を素早く冷やしました。

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この時点で比重計で測定したところ、目標のOG1.052ぴったりでした。

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1.053 OG

氷のように冷たいプエブロの地下水が麦汁を冷やしすぎたため、満杯のBrew Bucketを発酵室で少し温める必要がありました。適切な発酵温度19℃になったところで、スターターを投入しました。翌朝、様子を見ると、エアロックから気泡が出ていました。5日間発酵させた後、私は庫内の温度を23℃まで上げ、さらに3日間おいたところFGに到達しました。

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0.010FG

コールドクラッシングと樽詰めに移る前に、ドライホップを加え、3日間温かいビールと混ぜ合わせました。

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1.008 FG

3日後、コールドクラッシングを行い、ビールを樽詰めしました。樽をkeezerに入れ、一晩かけて炭酸ガスを発生させた後、サービング圧までガスを引き下げました。さらに数日かけて調整後、ビールは透明度が上がり、炭酸が抜け、提供できる状態になりました。

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つくものビールの評価方法

参加者に、フレーバーを評価する前に、ビールのアロマのみに注目するよう指示しました。各アロマとフレーバーのディスクリプタ(特性などの特徴量を数字に変換したもの)については、テイスターはその特定の特性の知覚強度を0〜9の範囲で書き込むよう求められました。0はその特性を全く感じないことを意味し、9はその特性が非常に強いことを意味します。データを収集した後、各アロマとフレーバーの記述子の平均評価を集計し、分析しました。

実験結果

このビールの評価には合計13名が参加し、全員がアンケートに答えるまで使用したホップ品種を知らせませんでいた。各ディスクリプタの平均的な香りと風味の評価をレーダーグラフにプロットした。

平均的なフレーバーとアロマの評価

(平均的な香りと風味の評価)

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参加者が最も顕著であると支持した3つの特徴

アロマ フレーバー
シトラス シトラス
トロピカルフルーツ トロピカルフルーツ

参加者が最も目立たないと答えた3つの特徴

アロマ フレーバー
オニオン/ガーリック オニオン/ガーリック
アーシー/ウッディ ベリー
ベリー ダンク/キャッティ

その後、参加者に全体的なホップの個性の中で、辛味を評価してもらいました。

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次に、このホップが似合うと思うビールのスタイルを教えてもらいました。

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最後に、テイスターにホップの特徴をどの程度楽しめたか、1〜10のスケールで評価してもらいました。

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著者の感想: 一言で言えば、これは私が今まで作った中で最高のアメリカンペールエールです。おそらくシムコ―のコフムロンが低いために苦味はスムーズでしつこくなく、モルトの微妙な甘みとうまく調和していると思います。予想外に、他の高濃度ホップのシムコービールで感じたような猫の尿臭やフレーバーは感じられず、むしろバランスのいいシトラスや松の特徴を大いに楽しむことができました。

まとめ

テイスターのデータから、シムコーはアメリカンペールエールやIPAによく合う、適度に刺激的な柑橘類、トロピカルフルーツ、松の特徴をもつと結論付けることができます。醸造家の間では、この品種はある種の猫の尿のような性質を持つという意見があるようですが、このシングルホップシムコービールを評価した人たちは、アロマとフレーバーの両方の評価から見るにあまり気にならなかったようです。

試しに、データ収集の後に数人のテイスターに非公式にアンケートを取り、このペールエールを造るのに何のホップを使ったと思うか聞いてみました。シムコーと答えた人は一人もおらず、ほとんどの人がモザイクかシトラと答えました。

私の味覚では、シムコーを使ったペールエールは、現在よく使われているモダンなホップと同じような特徴を持っていましたが、新しい品種ほどには主張が強くない感じがして、それはそれでいい感じでした。このビールはホップジュースではなくビールの味がし、過去にシムコーを使ったビールで猫の尿臭を感じたことがあったが、このビールにはそれがなかった。

私はシムコーの素晴らしさを忘れていました。今後他の品種と組み合わせて使ってみるつもりですが、またシムコーでシングルホップのビールを作るのも楽しみです。

シムコはYakima Valley Hopsで様々なパッケージサイズで販売中です。この品種について何か感想があれば、下のコメント欄で気軽にシェアしてください。


出典元

The Hop Chronicles | Simcoe (2016)


注釈は、自分達で追加した旨を伝える文書書く予定

※1 粉砕した麦芽

※2 Grainfatherは、醸造設備の製品名です。 オールグレイン(麦芽100%)での醸造を容易にするために設計された、革新的な新しいオールグレイン醸造設備です。 https://grainfather.com/

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