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Mosaic(2016)

ホップ

【作ってみた】モザイク(2016) ペールエールのフレーバーとアロマ

「Mosaic − モザイク(2016)」を使用したペールエールのフレーバーとアロマを知るために実際に作ってみました。あえて、他のホップと混ぜずペールエールをつくり、その特性を探ります。


The HOP CHRONICLES | MOSAIC (2016) PALE ALE

この記事は原著者(Brülosophy)の許可を得て翻訳・公開したものです。

著者: Malcolm Frazer


Mosaicは2012年にHop Breeding Companyからリリースされ、ビールに多様なアロマとフレーバーを与えることができるため、瞬く間に多くの醸造家が欲しがる品種のひとつとなりました。Mosaicは、フローラル、フルーティ、トロピカル、アーシー(※1)など、複数の品種のホップを使用したかのような複雑で奥深い香りが特徴的です。醸造家がこのホップを手に入れようと躍起になるのも納得がいきます。

Mosaic(2016)
成分
α酸 10.5 – 14%
β酸 3 – 4.5%
コフムロン 21 – 25% of alpha acids
トータルオイル 0.8 – 3 mL/100g
ミルセン 30 – 40%
フムレン 10 – 15%
カリオフィレン 3 – 8%
ファルネセン <1%
リナロール 0.4 – 0.8%
ゲラニオール 0.5 – 0.9%
β-ピネン 0.6  – 1%
交配した二個体 daughter of Simcoe and Nugget derived male

私はMosaic発売当初からのファンで、このホップを使い、何度も素晴らしい結果を出してきました。Mosaicのみを使用した市販のビールをいくつか試しましたが、そのほとんどが私が期待するような複雑でおいしいビールに仕上がっていました。もちろん、どのホップが使われているか知っているため、どのような味や香りがするのか分かっています。では、ブラインドテイスターはMosaicのシングルホップビールをどのように感じるのだろうか、と考えました。

実際に作って、ホップのフレーバーとアロマを探る

シングルホップペールエールを10ガロン仕込みました。半分はこの記事のために、半分は自分で楽しむために、シンプルな原料とクリーンな酵母でMosaicメインのビールを造りました。

モザイク ペールエール

レシピの詳細

バッチ サイズ 煮沸時間 IBU 標準参照法 初期比重 最終比重 アルコール度数
5.5 gal 60 min 54.8 IBUs 6.0 SRM 1.054 1.012 5.6 %
Actuals 1.054 1.013 5.4 %

発酵させる材料

名前 %
ESB Pale Ale Malt, Gambrinus 10.875 lbs 95.08
Vienna Malt, Avangard 7 oz 3.83
William Crisp Crystal Light 45L 2 oz 1.09

使用するホップ

名前 時間 使い方 形状 α酸(%)
Mosaic (HBC 369) 15 g 60 min Boil Pellet 13.5
Mosaic (HBC 369) 30 g 10 min Boil Pellet 13.5
Mosaic (HBC 369) 28 g 20 min Aroma Pellet 13.5
Mosaic (HBC 369) 56 g 3 days Dry Hop Pellet 13.5

使用する酵母

名前 ラボ 発酵度 温度
California Ale (WLP001) White Labs 77% 68°F - 73°F

醸造メモ(水のプロファイルなど)

Water Profile: Ca 69 | Mg 11 | Na 33 | SO4 130 | Cl 45 | HCO3 67

レシピのダウンロード

Download this recipe's BeerXML file


 醸造の数日前に、WLP001 California Ale yeastの新鮮なパックをスターター(※2)に投入しました。

仕込み用の水が温められている間に穀物を計量し、粉砕しました。

水がBeerSmith(※3)で指定された温度に達したら、冷却したMLTに水を移し、穀物を静かにかき混ぜ、目標のマッシュ温度に調整しました。

ここをクリックするとThermaPenのレビューにリンクします。

糖化を始めて15分後に麦汁のサンプルを少量採取し、pHを測ると、正常な値が得られました。

60分ほど置いた後、麦汁を回収し、適切な量になるよう素早くスパージ(※4)しました。麦汁が沸騰してきたところで、ケトルに投入するすべてのホップの量を測りました。

ホップをレシピに記載されているタイミングで添加し、1時間煮沸しました。

Spike Brewing V3 Brew Kettleのレビューはここをクリックしてください。

煮沸終了後、麦汁を手早く 150˚F/66˚C以下に冷やし、ワールプールを行い、麦汁をさらに冷やすため20分放置しました。

JaDeD Brewing The Hydra ICのレビューはここをクリックしてください。

比重が1.054になってることを確認した後、発酵槽に移しました。

麦汁が66°F/19°Cの状態で酵母を投入し、温度調節器を68°F/20°Cにセットしました。翌日、エアロックの活動が確認されたので、この温度で5日間発酵を続け、ドライホップを加え、温度を71°F/22°Cに上げて酵母の不活性化を促しました。1週間後、発酵している様子はほとんど見られなかったので、比重計で測定したところ、ビールが目標の比重に達していることが確認できました。

1.012

ビールは一晩かけてコールドクラッシュ(※5)され、その後樽に圧送されました。

Ss Brewtech Brewmaster Edition Chronical Fermentorのレビューはここをクリックしてください。

冷えた樽にゼラチンファイニング(※6)を加え、一晩かけて炭酸ガスを発生させ、その後CO2を減圧し、数日かけてコンディションを整えました。参加者にビールを提供するとき、そのビールはとても美しい姿をしていました。

つくものビールの評価方法

参加者は、味を評価する前に、ビールの香りだけに注目するように言われました。それぞれのアロマとフレーバーについて、その特徴の強さを0~9の数値で記入してもらいました。データを収集した後、各アロマとフレーバーの記述子の平均評価を集計し、分析しました。

実験結果

このビールの評価には合計24名が参加し、全員がアンケートに答えるまで使用したホップの品種を知らされていませんでした。各記述の平均的なアロマとフレーバーの評価をレーダーグラフにプロットしました。

平均的なフレーバーとアロマの評価

参加者が最も顕著であると感じた3つの特性

アロマ フレーバー
トロピカルフルーツ 樹脂系
シトラス シトラス&パイン(同数)
樹脂系 トロピカルフルーツ

参加者が最も感じなかった3つの特徴

アロマ フレーバー
タマネギ/ニンニク タマネギ/ニンニク
アーシー/ウッディー アップル/ペア
リンゴ/洋ナシ ベリー

参加者にホップの辛みの強さをどう感じたか教えてもらいました。

次に、そのホップが適していると思うビールのスタイルを教えてもらいました。

最後に、参加者にそのホップの特徴をどの程度楽しめたか、1~10の数値で評価してもらいました。

著者の感想: このビールは、オレンジの花で作ったジャムを連想させる土、花、柑橘系の香りがあり、強いタンジェリン(オレンジの一種)の存在感があるように感じられました。参加者と違い、樹脂の香りはあまり感じられず、少し驚きましたが、ホップを強く意識したからかもしれません。Mosaicのペールエールに期待した通り、美味しくて飲みやすいビールでした!

まとめ

Mosaicはここ数年よく使っていて、このホップ1つでフレーバーが重なり合うような印象を与えることができるその能力に強い愛着を持っています。私の経験では、Mosaicはダンクさ、そして「猫っぽさ」が少し欠ける傾向にあります。松脂、トロピカルフルーツ、シトラスといった表現がブラインドテイスティングの参加者の間で最も多かったことから、MosaicはIPAやホッピーペールエール、セゾンやファンキーなワイルドエールやサワーエールに適した品種であることは間違いなさそうです。

Mosaicについて何かご意見がありましたら、下のコメント欄からお気軽にお寄せください


出典元

The Hop Chronicles | Mosaic (2016) Pale Ale


(※1)土の香り

(※2)フラスコの中にDME(ドライモルトエキストラクト)を入れ、その中で酵母をあらかじめ活性化させておくもの。https://brulosophy.com/methods/yeast-starter-method/

(※3)自家醸造用ソフトウェアhttp://beersmith.com/

(※4)糖化が終わった麦芽からさらに糖分を取り出す作業https://www.altitudebrew.com/blogs/news/what-is-sparging

(※5)ビールを冷蔵庫などで冷やし、酵母やその他の粒子状物質を沈殿させ、取り除くこと。https://bisonbrew.com/how-to-cold-crash-beer/#:~:text=Cold crashing beer is a,proceed to kegging or bottling.

(※6)清澄剤を使用して、高分子のたんぱく質やポリフェノールを分解、吸着、沈殿させて除去すること。https://kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BT_1.pdf

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