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ホップ・クロニクル|El Dorado (2016)

ホップ

【作ってみた】エル ドラド(2016) ペールエールのフレーバーとアロマ

「El Dorado − エル ドラド(2016)」を使用したペールエールのフレーバーとアロマを知るために実際に作ってみました。あえて、他のホップと混ぜずペールエールをつくり、その特性を探ります。


The Hop Chronicles | El Dorado (2016)

この記事は原著者(Brülosophy)の許可を得て翻訳・公開したものです。

著者: Jason Cipriani


ワシントン州の美しいモクシー・バレーにあるCLSファームによって2008年に開発されたEl Doradoは、2010年に一般に公開され、スイカやストーンフルーツのようなトロピカルフルーツの刺激的な香りをビールに与える特徴ですぐに根強いファンを集めました。また、高いアルファ酸含有量による苦味のパンチもあり、El Doradoは現代のホップフォワード・ビール(※1)を造る醸造家にとって魅力的な二面性を持つ品種となっています。

https://i0.wp.com/brulosophy.com/wp-content/uploads/2017/12/El-Dorado_THC-1024x250.jpg?resize=620%2C151
成分
Alpha (α酸) 13~17%
Beta (β酸) 7~8%
コフムロン 28~33%
Oil 2.5~3.3mL/100g
Myrcene (ミルセン) 55-60%
Humulene (フムレン) 10~15%
Caryophyllene (カリオフィレン) 6-8%
Farnesene (ファルネセン) 0.1%
Linalool (リナロール) unknown
Geraniol (ゲラニオール) unknown
ß-Pinene (β-ピネン) unknown
Parentage (交配した二個体) ???

El Doradoは自分の醸造では使ったことがなかったですが、Florence BrewingのIPAをはじめ、多くの市販ビールに使われているホップです。このビールをはじめ、同じようなホップを使ったクラフトビールを楽しんでいたので、El Doradoだけを使ったビールをブラインドテイスターがどう思うのか楽しみでした。

実際に作って、ホップのフレーバーとアロマを探る

このビールのレシピは、飲みやすいグリスト(※2)と大量のエルドラドホップを使って、ザ・ホップ・クロニクルズのために特別にデザインされました。

Let the Lemondrop Blonde Ale

レシピの詳細

バッチ サイズ 煮沸時間 IBU 標準参照法 初期比重 最終比重 アルコール度数
5.5 gal 30 min 42.1 IBUs 3.5 SRM 1.050 1.012 4.9 %
Actuals 1.050 1.008 5.5 %

発酵させる材料

名前 %
Pale Malt, 2-Row (Rahr) 10 lbs 90.91
Vienna Malt (Briess) 1 lbs 9.09

使用するホップ

名前 時間 使い方 形状 α酸(%)
El Dorado 10 g 60 min Boil Pellet 14.4
El Dorado 20 g 15 min Boil Pellet 14.4
El Dorado 60 g 2 min Boil Pellet 14.4
El Dorado 80 g 3 days Dry Hop Pellet 14.4

Yeast(イースト)

名前 ラボ 発酵度 温度
Flagship (A07) Imperial Yeast 75% 60°F - 72°F

醸造メモ(水のプロファイルなど)

Water Profile: Yellow Bitter in Bru’n Water Spreadsheet

レシピのダウンロード

Download this recipe's BeerXML file


醸造する日の前夜に仕込み水を採取し、穀物の計量と粉砕を行いました。

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Grainfather(※3)は、寝ている間に電源が入るようにセットしておいたため、起きてすぐにお湯が沸いて、すぐにマッシュが目標の温度になりました。

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マッシュしてから、約15分後にpHを測定し、水質調整が適切であることを確認しました。

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糖化レスト(Saccharification Rest)してから60分後に、穀物を取り出し、適切な量の水を麦芽に吹きかけました。

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Click pic for Grainfather review

レシピ通りにEl Dorado を加えて、麦汁を60分間煮沸しました。

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煮沸が完了した麦汁を、CFC(※4)を通して消毒した発酵容器に直接入れました。

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Click pic for Ss Brewtech Brew Bucket review

この時点で比重計を測定してみると、ペールエールとしては立派なOGが表示されました。

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1.050 OG

発酵温度66°F/19°Cに設定した部屋にBrew Bucketを設置した後、フラスコに残った麦汁を集め、Imperial Yeast A01 Flagship(※5)の1パックを、バイタリティスターター(※6)に入れました。4時間後にピッチングを見ると、酵母はすでに活性の兆しを見せていました。

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翌朝一番にビールを確認すると、発酵が始まっていることを示すエアロックが動いていました。4日後、エアロックの動きが鈍くなったので、発酵容器の温度を72˚F/23˚Cまで上げ、完全に止めようとしました。3日後に比重計で測定したところ、FGに到達していました。

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1.008 FG

この時点でドライホップチャージを計量し、追加しました。

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5日間のドライホップの後、コールドクラッシング、ゼラチンでのファイニング(清澄化)、そして樽詰めと進めました。

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一杯にした樽をkeezerに入れ、一晩かけて炭酸ガスをビールに充填させた後、ガスをサービング圧に引き下げました。さらに数日間調整した後、透明な炭酸ビールができあがり、サーブする準備ができました。

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つくものビールの評価方法

参加者に、フレーバーを評価する前に、ビールのアロマのみに注目するよう指示しました。各アロマとフレーバーのディスクリプタ(特性などの特徴量を数字に変換したもの)については、テイスターはその特定の特性の知覚強度を0〜9の範囲で書き込むよう求められました。0はその特性を全く感じないことを意味し、9はその特性が非常に強いことを意味します。データを収集した後、各アロマとフレーバーの記述子の平均評価を集計し、分析しました。

実験結果

このビールの評価には合計24名が参加し、全員がアンケートに答えるまで使用したホップ品種を知らせませんでいた。各ディスクリプタの平均的な香りと風味の評価をレーダーグラフにプロットした。

平均的なフレーバーとアロマの評価

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参加者が最も顕著であると支持した3つの特徴

アロマ フレーバー
トロピカルフルーツ シトラス
シトラス トロピカルフルーツ
フローラル フローラル

参加者が最も目立たないと答えた3つの特徴

アロマ フレーバー
オニオン/ガーリック オニオン/ガーリック
ダンク/キャッティ グラッシー
グラッシー ダンク/キャッティ&アーシー/ウッディ

その後、参加者に全体的なホップの個性の中で、辛味を評価してもらいました。

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次に、このホップが似合うと思うビールのスタイルを教えてもらいました。

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最後に、テイスターにホップの特徴をどの程度楽しめたか、1〜10のスケールで評価してもらいました。

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著者の感想: El Doradoを使用された市販のビールを飲んだ体験を踏まえて、シングルホップのペールエールは、柑橘系とトロピカルフルーツの香りがすると思っていました。実際には、スイカの香りが強く、トロピカルフルーツの香りがより強く感じられました。また、ビールが温まるにつれて、レモンの心地よい香りがしてくることにも気づきました。このEl Doradoのペールエールを1杯1杯、楽しんでいます。

まとめ

トロピカルフルーツ、シトラス、ストーンフルーツなどの特徴を持つEl Doradoは、2010年の登場以来、非常に注目されているホップで、最近流行のフルーティーな特徴を持っています。El Doradoのみを使用したペールエールをブラインドで評価したところ、アロマ、フレーバーともにトロピカルフルーツとシトラスが最も刺激的な特徴として挙げられ、既存の記述子と間違いなく一致しています。これは他の人気ホップと同じですが、El DoradoはCitraやMosaicのような品種ほどパンチがなく、ほとんどのテイスターは全体の辛味を軽度から中程度と評価しています。

しかし、El Doradoが単体で輝きを放てないホップだと言っているわけではないです。実際、アンケートに答えた後にテイスターと話をすると、ホッピーなビールがあまり好きでない人でも、全くつぶしの効かないペールエールに仕上がったというのが一般的な感想でした。また、El Doradoを苦味付けのために、ケトル入れてすぐに添加しても、非常に心地よいアロマとフレーバーに加えて、目立った鋭い苦味にはならず、むしろその反対でした。El DoradoのcohumuloneがChinookのような苦味の強いホップと類似していることを考えると、これは興味深いことだと思います。

このようにEl Doradoを使った醸造を初めて経験したので、ブロンドエールやアメリカンウィートなどのスタイルで使用量を変えたときにどのように作用するかを見るのが楽しみです。El Doradoは、ハードキャンディーのような風味を感じる人がいると聞いたことがありますが、それは全く同感で、口の中に嫌な膜を残すのではなく、もっと欲しくなるような風味を残しています。

El DoradoはYakima Valley Hopsのpellets と whole coneの両方で様々なパッケージサイズで販売されています。El Doradoについて何か感想があれば、下のコメント欄でシェアしてください。


出典元

The Hop Chronicles | El Dorado (2016)


※ 1 ホップフォワードとは、ジューシーでグレープフルーツのようなフレーバー、はじけるような明るいベリーのアロマ、爽やかな苦味など、あらゆる意味を持つ。つまり、味や香りに複雑性がある特徴を持つビール。 https://www.greatlakesbrewing.com/content/exploring-hoppy-styles

※2
粉砕した麦芽

※3
Grainfatherは、醸造設備の製品名です。 オールグレイン(麦芽100%)での醸造を容易にするために設計された、革新的な新しいオールグレイン醸造設備です。
https://grainfather.com/

※4
インサイドチューブのデザインで、ボイルケトルからの熱い麦汁を内側のチューブを通して流し、冷たい水を外側のチューブを通して反対方向に流すための設備です。
https://www.northernbrewer.com/collections/plate-and-counterflow-chillers

※5
イーストの商品名です。
https://www.imperialyeast.com/organic-yeast-strains/yeast-types/ale/flagship/

※6
バイタリティとは酵母が発酵する準備ができているかどうかを示す指標である。酵母の活性を高くする方法として、バイタリティスターターと呼ばれるものがある。これは、比較的少量の麦汁に酵母を投入し、ピッチング前に約4時間スタータープレート上で回転させるというもので、酵母の活性を高くすることができるものです。
https://brulosophy.com/2019/07/22/the-impact-of-a-vitality-starter-when-using-old-yeast-exbeeriment-results/

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