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家庭用ビールに含まれるフェノールとタンニンについて

オフフレーバー

【オフフレーバーの原因】フェノールとタンニンの原因と対策

💡 本記事のまとめ・学べること

  • フェノール類は、クローブやバナナのようなフレーバーから、スパイシー、スモーキー、さらには薬のようなフレーバーまで、さまざまなフレーバーをもたらします
  • フェノール類は、発酵過程の酵母から生成されるため、ほとんどのビールに含まれますが、オフフレーバーにならないようにする必要があります
  • フェノール類によるオフフレーバーを防ぐには、水の選択、マッシュ時の適切なpHバランス、適切な温度でのスパージング、衛生管理、そして酵母の選択が重要です

Phenolics and Tannins in Home Brewed Beer

この記事は原著者(BeerSmith)の許可を得て翻訳・公開したものです。

著者: BRAD SMITH


今週は、ビールにおけるフェノール(およびタンニン)のフレーバーの問題について考えてみたいと思います。フェノール類は通常、オフフレーバーとみなされますが、ビールのスタイルによっては、少量であれば好ましいとされる場合もあります。

本記事では、前回ご紹介したジアセチル、硫化ジメチル、エステルやビールの評価に関する記事など、ビールのオフフレーバーについての連載の一部となります。

フェノールとは?

フェノール類は、家庭で醸造するビールに、クローブやバナナのようなフレーバーから、スパイシー、スモーキー、さらには薬のようなフレーバーまで、さまざまなフレーバーをもたらすため、複雑なものと考えられています。 とりわけドイツ・ヴァイツェンや多くのベルギー・ビールでは、クローブのフレーバーが好ましいとされていますが、ほとんどのビールでは、フェノール類は欠点とみなされます。

フェノール類は、アルコール類と化学的に類似した化合物で(しかしアルコールではない)、強い酸味を持つ傾向 があります。実際に、いくつかのフェノールは洗浄剤として使用されています。フェノール類には、ポリフェノール、クロロフェノールなど、さまざまな種類があり、これがビールのフレーバーを損ねる原因となっています。

フェノール類は、発酵過程の多くの酵母にから自然に生成する もので、ベルギー、ドイツ、イギリスの酵母の一部は、より高濃度のフェノール類を生成します。また、天然酵母は、バンドエイドのようなフレーバーをもたらすことが多いです。

フェノール系フレーバーの発生源(原因)

フェノール類は、たくさんの酵母により生産されるため、どのビールにもある程度含まれています。しかし、醸造工程と原料の選択においていくつかの重要なポイント があり、それによって完成したビールにおけるフェノールの影響がどの程度になるかが決まります。

水の選択(塩素)

まず、醸造するにあたって、塩素を含んだ水を使用するべきではありません。塩素の強い水を使うと、塩素がビール中の自然に存在するフェノールと反応してクロロフェノールを生成し、味わいが非常に悪く、試飲の際に瞬時に気づくほどです。クロロフェノールは、完成したビールに、バンドエイドやおむつのような強いフレーバーとアロマを与えます。

普段使っている水道水に塩素が含まれていない場合でも、アメリカの水源では年に1回程度、塩素濃度の高い水を流し、水道システムを浄化しているため、注意が必要です。たまたま、その浄化された週に醸造した場合、バンドエイドのような強いフレーバーが出ることがあります。

水を選択するにあたって、ボトル入りのRO水を使用するのは良いです。また、漂白剤などの塩素系洗浄剤を使用する場合は、ビールに塩素が混入する可能性があるので、使用前に器具のすすぎを徹底する必要があります。

マッシングとスパージのプロセス

フェノールのもう一つの形態はポリフェノールで、一般的にはタンニンと呼ばれています。タンニン(ポリフェノール)は、完成したビールに渋みや苦味を与える傾向があり、パーマネントヘイズやチルヘイズ(ビールを冷やすと現れる霞)の原因となることもあります。

タンニンは、オーバースパージ(マッシュ時にスパージを長く続けること)、高すぎる温度(170°Fまたは77℃以上)でのスパージ、高すぎるpHでのマッシュによって抽出されます。

pH 5.5 以上は特にタンニンが抽出しやすく、マッシュ時のpHは 5.1または5.2 が理想とされます。これらのいずれも、ビールの濁り、チルヘイズ、ビールの渋味や苦味をもたらす原因となります。

酵母の選択

冒頭で述べたように、すべての酵母はある程度フェノールを生成しますが、一部の酵母は特にフェノールを生成しやすい傾向があります。特に、天然酵母とベルギー酵母は、完成したビール中に多量のフェノールを生成する傾向があります。 低濃度であれば、ベルギービールやドイツの伝統的なヘフェヴァイツェンに好まれるクローブのようなフレーバーとして表れます。しかし、フェノールが多すぎると、スモーキーやスパイシーなフレーバー、また、バンドエイドのようなフレーバーになります。

フェノール類を検知したバッチがある場合、酵母を変更したほうがいいかもしれません。また、非常に濃いフェノールフレーバーを生成する傾向がある天然酵母を使用しないよう注意してください。

その他のフェノール源

天然酵母のほかにも、藻類やバクテリアなど、多くの野生生物がフェノールを生成します。そのため、水源が疑わしい水質であることや、小川や湖などの地表水である場合は、代わりにボトル入りのRO水を醸造に使用することを検討してみてもよいかもしれません。

バクテリアの影響は、しばしば酸味のあるフレーバーと組み合わさって、強いフェノールのフレーバーを生み出すことがあります。これは、ビールの醸造や提供に使用されるホース、バルブ、蛇口などの汚染から生じることも多くあります。

お住まいの地域の水道水の性質は、市や水道会社から入手することができます。また、地元の醸造クラブがすでに地元の水の特徴をまとめていることも多いので、調べてみるとよいでしょう。水質検査では、上に挙げた6つの重要な項目を調べます。

また、多くの水道会社は定期的に(多くは春に)高度に塩素化された水で設備を洗浄するので、そのスケジュールを知らないと、非常に残念な醸造結果をもたらす可能性があることに注意してください。

フェノール類に関するまとめ

フェノール類は、前述のとおり、いくつかの異なるフレーバーとして現れ、また様々な根本原因が考えられるため、適切に対策するのが最も難しい問題の1つです。水の選択、マッシュ時の適切なpHバランス、適切な温度でのスパージング、衛生管理、そして酵母の選択が重要です。

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出典元

Phenolics and Tannins in Home Brewed Beer

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