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EXBEERIMENT | OFF-FLAVOR(オフフレーバー) SERIES: ACETALDEHYDE

オフフレーバー

【オフフレーバーの原因】アセトアルデヒドは簡単に識別できるか

アセトアルデヒドは、発酵の際に酵母が生成する中間化合物で、青リンゴなどの匂いを生みます。アセトアルデヒドが生成された場合、簡単に識別・検知できるものなのかを実験した結果をご紹介します。

💡 本記事のまとめ、学べること

  • ジアセチルは、ビールのスタイルによっては許容され、好まれることもありますが、アセトアルデヒドは、基本的に好まれません
  • アセトアルデヒドの基準値は5-15ppmとされていますが、市販のビールのほとんどは2-4ppmで、存在はしますが検出できないレベルです
  • 今回の実験では、少なくとも高濃度のアセトアルデヒドは識別可能であるという結論に至りました

EXBEERIMENT | OFF-FLAVOR SERIES: ACETALDEHYDE

この記事は原著者(Brülosophy)の許可を得て翻訳・公開したものです。

著者: Malcolm Frazer


酵母(イースト) は、糖からエタノールに至る楽しい過程で、多くの中間化合物(※1) を生成します。その中間化合物の中には、他の化合物に変化するものもあれば、発酵のために利用されたり、糖が枯渇したときに生き残るためのエネルギーを蓄えたりするものもあります。

これらの中間化合物の一部は、単細胞生物である酵母(イースト) の努力にもかかわらず、どうしても残ってしまうもので、ある程度はビールの特徴を構成するのに役立っています。この残った化合物を補完的なものと考えるか、オフフレーバーと考えるかは、醸造家が最終製品に何を求めるかによって決まることが多いのです。ジアセチル(Diacetyl) は、ビールのスタイルによっては許容され、好まれることもありますが、アセトアルデヒド (C2H4O or CH3CHO) は、一般的に好まれないと考えられています。

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アセトアルデヒド(ass-eh-tal-deh-hyde) は、アルデヒド類の有機化合物で、ビールだけでなくコーヒーや熟した果物、ワインにも微量に含まれます。 これまでの私の経験上、アセトアルデヒドの感じ方は人それぞれで、青リンゴのような刺激的な香り、ジョリーランチャーのような香り、ラテックス塗料、生カボチャ、虫よけスプレーやシトロネラなどの表現もありました。私にとっては、アセトアルデヒドは非常に不快でしたが、それが絶対にアセトアルデヒドによるものだったと言い切れるか自信がありません。

私たちは、テイスターがアセトアルデヒドを検出・識別できるかに興味を持ち、自分たちで評価するために、高品質のオフフレーバーカプセルメーカーであるFlavorActiV社と共同で、このxBmtを企画しました。

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実験の目的

アセトアルデヒドを添加したペールラガーと無添加の同じビールをブラインドテイスターが区別する能力を評価すること。

実験の方法

私はマーシャルから様々なFlavorActiVのフレーバースタンダードを郵送で受け取りましたが、それらはすべてラベルが剥がされ、識別のためにパッケージに名前が書かれていました。そうする一番の理由は、私が試飲する際に、どのオフフレーバーかわからないようにするためでした。

これまでのxBmtsオフフレーバーシリーズ と同様に、私はBitburger German Pilsnerを選びました。そのクリーンなエステルの特徴、しっかりしたモルト感、そして適度な苦味は、不純物を際立たせることができると考えたからです。典型的なアメリカのライトラガーを使うことも考えましたが、リンゴや洋ナシのような独特の甘さを感じる人もいるので、オフフレーバーの邪魔にならないようにと、思いとどまりました。

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アセトアルデヒドの基準値は5-15ppmとされていますが、市販のビールのほとんどは2-4ppmで、存在はしていますが検出できないレベルです。

Bitburgerに含まれるアセトアルデヒドのデータは見つかりませんでしたが、私の今までの経験や、クリーンなドイツのピルスとして広く賞賛されている事実と照らし合わせると、ほぼ存在しないレベルと考えざるを得ません。

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FlavorActiVが提供するアセトアルデヒドカプセルは、1リットルのビールに添加すると、嗅覚閾値(※2) の3倍の濃度を与えるように設計されており、この濃度は一般的に言われているオフフレーバーのテストに理想的だと判断しました。投与するサンプルは、FlavorActiv社の説明書に従って、まず4リットルのピッチャーに約200mLのビールを静かに注ぎ、フレーバースタンダード2カプセルの中身を加えて軽く振り混ぜた後、さらに1800mLのビールを容器に加えました。オフフレーバー以外による違いがないことを確認するため、非投与のサンプルも同様に処理しました。

このxBmtのデータは、Apis Mead & Wineryで開催されたTRASH Homebrewers Meetingで収集されました。実験対象について知らされていない経験値の異なる22人が、色違いの不透明カップに入った3種類のビール(アセトアルデヒドを意図的に投与したサンプルを1つ、無添加のビールを2つ)を提供され、特徴的な1つを選択するよう指示されました。統計的に有意になるためには、12人(p<0.05)のテイスターが添加されたサンプルを選択する必要がありましたが、実際に15人(p=0.0009)が正確な選択をしました。このことから、参加者はアセトアルデヒドを意図的に添加したビールと無添加のクリーンなビールを確実に識別できることがわかりました。

実験の結果

アセトアルデヒドのビールを正しく選択した参加者に、xBmtの企画を知らないまま、2種類のビールだけを比較する簡単な追加質問に答えるように指示しました。

最初の実験でアセトアルデヒドのサンプルを選択したテイスターに好みを尋ねたところ、、11人が非投与のサンプルを選び、4人が違いに気づいたものの好みはないと答えました。アセトアルデヒドを添加したビールを好ましいと答えたテイスターは1人もいませんでした。

そして、そのうちの1つのサンプルにオフフレーバーが使用されていることが明らかにされましたが、どのオフフレーバーが使用されているかは知らされませんでした。オフフレーバーが添加されていると思われるビールを特定してもらったところ、15人全員が正しい選択をしました。次に、一般的なオフフレーバーのリストと、それらがビールにどのように含まれるかの簡単な説明を提供し、ビールに使われていると思われるものを選んでもらったところ、15人全員が正解しました。その結果、正しくアセトアルデヒドを選択したのが6名、DMSが3名、渋味が2名、金属味が2名、酪酸が1名、酸化フレーバーが1名でした。

**私の感想: ****今回のxBmtに使用されているオフフレーバーについて知らなかったので、いつも以上に未知な試飲となりました。ビール中の濃度から想像していたほど明確ではありませんでしたが、4回のトライアングルテストで一貫して特徴的なサンプルを識別することができました。初めは渋味がオフフレーバーとして使用されていると考えましたが、少し時間を置いて(まだオフフレーバーの正体がわからないまま)ビールに戻ると、虫除けスプレーのような匂いがしました。そこで、これはアセトアルデヒドによるものだと思い直すことになりました。

議論のまとめ

今回の実験では、グリーンアップル、ラテックス、バグスプレーなどのフレーバーと、比較的低い嗅覚閾値とを組み合わせています。アセトアルデヒドを嗅覚閾値の3倍まで意図的に投与したビールと、投与していないサンプルを、参加者が確実に区別できたのは驚くことではありません。

トライアングル試験で正解した15人のテイスター中6人がオフフレーバーを正確に識別したという事実と合わせて、これらの結果は、少なくとも高濃度のアセトアルデヒドは検出可能かつ識別可能であるということを示唆します。

醸造とビールの評価という側面を重視する全米ランクのBJCP審査員として、私はこの結果に満足し、ある程度妥当であると感じました。しかし、投与されたサンプルは嗅覚閾値の3倍の濃度だったため、自家醸造ビールでアセトアルデヒドの存在を指摘されるものが実際どの程度の濃度なのか気になりました。

審査は人間が行うものなので、アセトアルデヒドが他のフレーバーと間違われる可能性があるのは間違いありませんが、一般的な他のオフフレーバーよりは区別しやすいようです。

アセトアルデヒドを投与したビールを飲んだことがある方、アセトアルデヒドが目立つビールを飲んだことがあると思われる方は、ぜひ下記のコメント欄で感想をお寄せください。


出典元

exBEERiment | Off-Flavor Series: Acetaldehyde

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