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【オフフレーバーの原因】硫化ジメチル(DMS) は簡単に識別できるか

オフフレーバー

【オフフレーバーの原因】硫化ジメチル(DMS) は簡単に識別できるか

硫化ジメチル(DMS) は、ビールの評価において、最もよく引き合いに出されるオフフレーバーの1つです。このオフフレーバーはよく口にされますが、簡単に識別できるものなのか、実験した結果をご紹介します。

💡 本記事で学べること

  • 硫化ジメチル(DMS) は、クリームコーンや調理した野菜のような特徴を与える硫黄化合物です
  • 硫化ジメチル(DMS) の原因は、麦芽製造工程の発芽段階で生じる別の化合物、S-メチルメチオニン(SMM) の分解に起因するものです
  • 対策は、煮沸時間を長くし、ケトルの蓋を必ず閉めるなどの方法があります
  • 今回の実験の結果、硫化ジメチル(DMS) の識別をするのは、簡単ではないことが分かりました

EXBEERIMENT | OFF-FLAVOR SERIES: DIMETHYL SULFIDE (DMS)

この記事は原著者(Brülosophy)の許可を得て翻訳・公開したものです。

Author: Marshall Schott


ビールの評価において、最もよく引き合いに出されるオフフレーバーの1つが、硫化ジメチル(DMS) です。これは、一般的にビールにクリームコーンや調理した野菜のような特徴を与えると言われる硫黄化合物です。

多くの醸造家は、硫化ジメチル(DMS) がビールに混入するリスクを減らすために、煮沸時間を長くし、ケトルの蓋を必ず閉めるなどの方法をよく取ります。 しかし、硫化ジメチル(DMS) とは一体何なのでしょうか。また、硫化ジメチル(DMS) はどこから来るのでしょうか。

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硫化ジメチル(DMS) の最も顕著な発生源は、麦芽製造工程の発芽段階で生じる別の化合物、S-メチルメチオニン(SMM) の分解に起因するものです。SMMは熱に弱いため、糖化(マッシュ) の段階で容易に硫化ジメチル(DMS) に変換されます。

焙煎とキルン(大麦を熱風でいぶしながら乾燥させる) により、SMMの存在が減少するため、醸造家はピルスナーのような非常に軽い麦芽を大量に使用する場合に、硫化ジメチル(DMS) の発生を最も心配する傾向があります。 硫化ジメチル(DMS) の詳細については、スコット・ジャニッシュ氏の優れた記事「ビールのDMSを防ぐには」を強くお勧めします。

硫化ジメチル(DMS) は紛れもなく実在し、ビールの特徴に影響を与えます。そして、人間には比較的少量の硫化ジメチル(DMS) でも感知する能力がありますが、この点について今回問題にしたいわけではありません。

問題は、ビールを評価する際に硫化ジメチル(DMS) が検出される頻度が非常に高いことです。公認の大会であれ、私的な自作ビールのシェアであれ、DMSの3文字は、ほぼ確実に誰かが口にしたり書いたりしています。 これを裏付ける確かな証拠はありませんが、私の勘では、硫化ジメチル(DMS) に関するこの傾向は、主に人気作家やポッドキャストのホストによる話題提供に由来しています。私も何度も経験したことですが、なぜそう言い切れるのか、不思議でなりませんでした。

このxBmtシリーズでは、醸造家が総合的な官能分析能力を高めるために使用できる、さまざまなオフフレーバーのカプセルを製造しているFlavorActiVとパートナーシップを組みました。

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実験の目的

硫化ジメチル(DMS) を添加したペールラガーと、添加されていない同じビールのサンプルを区別するブラインドテイスターの能力を評価します。

実験の方法

当初、私はこのxBmtに自分のビールを使うつもりで、実際に10ガロン醸造し、これまでで最高のウィーンラガーになったと思いました。しかし、実験への影響を考えたとき、一定レベルの硫化ジメチル(DMS) が含まれる可能性のある自家醸造ビールではなく、クリーンで明確な市販ビールを使用する方が賢明だと気づきました。私の醸造仲間全員が絶賛するBitburger German Pilsnerは、その条件にぴったりだったので、近所のTrader Joe'sに買いに行きました。

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ビットブルガーに含まれる硫化ジメチル(DMS) の実際の濃度は、ネット上にデータがないのでわかりません。しかしここ数年私たちがビットブルガーを楽しんでいるなかで硫化ジメチル(DMS) を感じたことはありません。

FlavorActiVの担当者に確認すると、提供された6個の硫化ジメチル(DMS) カプセルは、32fl.ozのビールに投与するのに十分な量なのだそうです。

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硫化ジメチル(DMS) の結晶がしっかり溶けてビール中に均等に分散していることを確認するため、旅行中のデータ収集によく使う色違いのなるゲンボトルを使用しました。1つに6カプセルを入れ、それぞれのボトルに2缶ずつビットブルガーを入れました。

硫化ジメチル(DMS) を添加したビールは他のものより若干泡立ちましたが、1~2分かけて結晶が溶解する間に泡は消えました。

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充てん・密封されたボトルは、約1時間後のデータ収集開始まで十分に冷やせるよう、十分な氷のうを入れた小型クーラーに入れました。

実験の結果

1本あたり32FL(オンス)のビールが入っており、1人あたり約3ozのサンプルを提供するため、他のxBmtsと比べると参加者が制限されることになります。経験は知覚能力に影響しないとはいえ、実験の対象を考えると、参加者のほとんどが硫化ジメチル(DMS) に精通している必要がありました。BJCP認定ビアジャッジ4名、シセロン認定ビアサーバー3名、プロとして醸造を行う経験豊富なホームブルワー1名、クラフトビールマニア2名、ミラーライトを飲む隣人からなる合計11名がこのxBmtに参加しました。

すべての参加者は、硫化ジメチル(DMS) が実験対象であることと、そのビールが信頼できる市販のジャーマンピルスナーであることを知らずに参加しました。各試験者は、硫化ジメチル(DMS) を添加したビールを1本、無添加のビールを2本、それぞれ異なる色の不透明なカップで受け取り、それぞれのサンプルを識別するよう求められました。このサンプル数で統計的に有意になるためには、7人(P<0.05)のテイスターが硫化ジメチル(DMS) を添加したビールを正確に識別しなければなりませんでした。最終的に、3人(P=0.77)だけが正しい選択をしました。つまり今回の実験では、硫化ジメチルが投与されたビールと、無添加のクリーンなビールとを区別できなかったということです。

すべてのデータを収集した後、私はテイスターに、これはオフフレーバーに焦点を当てたxBmtであり、彼らが試飲するサンプルの少なくとも1つは、よく言われるオフフレーバーが投与されていることを明かしました。テイスティングを終えた後、このxBmtに使われていると思われるオフフレーバーを尋ねると、一人だけがDMSと答え、しかも彼はトライアングルテストが正確にできた数少ない一人でした。

著者の感想: 私はビットブルガーが大好きです...、そして、硫化ジメチル(DMS) は大嫌いです。ビールをナルゲンボトルに注いでから、翌朝ボトルを洗浄するまでの間、私は簡単に投与されたサンプルを検出することができました。それは、私が大好きなクリームコーンの特徴ではなく、安いケチャップで和えた茹ですぎのキャベツのような香りでした。私がそう感じたのは、どのサンプルに硫化ジメチル(DMS) が含まれているかを知っているからなのか、それとも本当に化合物の匂いを感じているのか、興味を持った私は、他の人から提供された複数の「ブラインド」トライアングルに参加しました。最初の試みは、仲間から目をつむるように言われ、1つずつカップを手渡されましたが、硫化ジメチル(DMS) の入ったサンプルを選ぶことができなかったので、脳がイタズラをしているのだと解釈しました。しかし、目を開ける前に仲間はもう一つのカップを渡してきて、それにはあのひどい臭いを感じたのです。彼ははじめ、私に3つの無添加のカップを渡して私を騙そうとしていたのでした…。

まとめ

私はこの手の専門家であるとは思っていませんし、専門家であると主張する人がいれば、少しぞっとします。15年間この仕事(心理学)に携わってきて学んだことは、人間は奇妙なことを奇妙な理由で行い、それはしばしば我々の意識の外側にあるということです。ビールの評価に関して言えば、自分たちが意識している以上に、自分の知覚の特異性、個人の好み、過去の経験が、しばしば客観的だと思っている評価にも影響を与えているのです。 (つまり、経験に基づいた識別が、必ずしも有効ではないと言うことです。)

信頼できるテイスターが次々とトライアングルテストで間違った選択をしているのを見ながら、私は何が起こっているのだろうと考え始めました。というのも、硫化ジメチル(DMS) を添加したビールは、冷・温に関係なく、複数のトライアングルテストですぐに識別できたからです。これは私にとって非常にユニークな経験でした。私はほとんどいつも、参加者と同じかそれ以上のパフォーマンスを発揮するのですから。私は非常に困惑し、当然ながらいくつかの説明の可能性を検討しました。

ビール中の硫化ジメチル(DMS) の濃度が十分でなかった可能性もありますが、それは安易な言い訳のように思えますし、個人的にはメーカーの推奨するものを信用せざるを得ません。硫化ジメチル(DMS) を意図的に投与したビールが、投与していない自家製ビールより、硫化ジメチル(DMS) の含有量が少ない確率は極めて低いように思えますし、硫化ジメチル(DMS) ビールを検出した人は、むしろそれを容易に検知したようですから、私には少なくとも嗅覚閾値を超えていたと考えられます。

私の友人2人が言っていたように、硫化ジメチル(DMS) に対する感度がある人がいるかもしれません。どちらもBJCP審査員で、私が正直な意見として信頼していますが、2人ともトライアングルテストで間違っていたのです。この場合、感受性のある人は何度も試行錯誤を繰り返すうちに、投与されたビールを一貫して識別できるようになるはずです。結局のところ、なぜこのような結果になったのか、私にも分かりません。

個人的には、ビールを試飲する資格のある人たちが、ビール中の硫化ジメチル(DMS) の存在を確認できなかっただけでなく、無添加のサンプルとも区別できなかったという事実から引き出される意味合いにはとても興味があります。私はずっとこの化合物は簡単に識別できると思い込んでいました。

そして今、私が過去に行った硫化ジメチル(DMS) のコメントはおそらく間違っていたこと、意図的に一生懸命調べた結果気づいた「クリームコーン」の特徴は、材料から与えられたスタイルで、許容できる要素だったかもしれないこと、私が使い古した専門用語を使ったのは、おそらく自分が適切だと思いたいからだったことを、恥ずかしながら認識させられることになりました。

私は、自分の困惑の度合いに応じて、とりとめのない話をする傾向があることに気づきました。この件に関しては、もっともっと話をすることができるのですが、ここではブレーキをかけます。簡潔にするために、これらの結果に対して何人かが主張すると思われる様々な論点には触れません

しかし、この調査結果として生じた不協和を解消するために『不味い味論議』に頼ろうとする人、特にビールからしかDMSを感じた経験がない人は、ぜひ、FlavorActivの投入剤を入手して自分で試してみてください。きっと驚かれることでしょう。

硫化ジメチル(DMS) を投与されたビールを経験したことがある方、あるいは硫化ジメチル(DMS) が目立つ量のビールを飲んだことがあると思われる方は、ぜひ下のコメント欄で感想を聞かせてください。


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GMP品質フレーバー基準、官能パネルテイスタートレーニング、世界最大の飲料官能試験制度を提供するFlavorActiVが、このxBmtをサポートしています。


出典元

exBEERiment | Off-Flavor Series: Dimethyl Sulfide (DMS)

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